こんにちは!
ゴールデンウィークですねー。
仕事ばかりですねー(笑)
コロナ禍で遊べない分、外で体験できない分今は知識を蓄えましょう!
今日は最近仕事で検出が続き、ICT(感染対策チーム)で気にかけているStenotrophomonas maltophiliaについてまとめたいと思います。
目次
S. maltophiliaとは
菌の特徴
S. maltophiliaは、ブドウ糖非発酵のグラム陰性桿菌です。
河川や土壌などの環境中に存在しています。
名前が長くて覚えにくいですよね。
こういう時は由来を知って印象付けましょう!
Stenos〔わずかな〕trophos〔栄養で生きる〕monas〔種族〕の中でmalt〔麦芽〕に親和性のある〔philia〕もの,という,低栄養要求性を体現したかのようなネーミングとなっている.かつてはPseudomonasと同属として分類されており,1993年にStenotrophomonasと分類され直した.
引用:Stenotrophomonas maltophilia 〔マルトフィリア〕 | グラム染色: Gram Stain
臨床検査において抑えておきたい特徴は以下の通り。
- オキシダーゼ陰性
- DNase産生
- 染色体性メタロ-β-ラクタマーゼ産生
ブドウ糖非発酵のグラム陰性桿菌でオキシダーゼ陰性ときたらこのS. maltophiliaか、Acinetobacter sp.あたりを思い浮かべましょう!
Acinetobacter sp.はグラム染色で球桿菌なので区別ができます。
試験対策
微生物の認定試験では僕の解答があっていればですが、実技試験の寒天培地コロニーから菌を推定する問題で出ました。
ただし、認定試験は答案用紙の返却と採点結果の開示がありませんので、記憶だけを頼りにですのであしからず。
この実技試験ですが、さすがにコロニーの形態だけでは推定しきれませんので、問題文章がついています。
背景は、
- 入院中の免疫不全患者
- カルバペネム系薬投与中
- 材料は喀痰(うろ覚えです)
- グラム陰性桿菌
- オキシダーゼ陰性
こういったものがあったと思います。
BTB寒天培地からブドウ糖非発酵菌を疑い、免疫不全患者なので日和見感染、そしてカルバペネム薬が効かないとくればメタロ-β-ラクタマーゼ産生菌であるS. maltophiliaが推定されます。
院内感染のリスク
さて、ICTで気にしなければいけないのが 院内感染のリスクです。
抑えるべきポイントは、
アウトブレイクが発生した場合には、これらを念頭に機器や物品の調査をする必要があります。
水回りであれば透析用水,消毒薬,手洗い石鹸,コンタクトレンズ洗浄液,製氷機,シンク,サラダなどあらゆるところに常在する.特筆すべきはプラスチック表面でのBiofilm形成能力であり,時に血管内デバイスの表面に複数菌でのBiofilmを形成する.
引用:Stenotrophomonas maltophilia 〔マルトフィリア〕 | グラム染色: Gram Stain
感染症を発症した場合は肺炎が最多ですが、他臓器も標的となりますし血流感染も起こします。
メタロ-β-ラクタマーゼ
β-ラクタマーゼについて書き始めるとすさまじく長くなるので今回はさらっといきます。
メタロ-β-ラクタマーゼは、β-ラクタマーゼの中でクラスBに分類されています。
メタロ-β-ラクタマーゼは第3世代セフェムだけでなく、イミペネムをはじめとするカルバペネム系抗菌薬をも分解してしまい(カルバペネマーゼと呼ばれます)、最も危険なβ-ラクタマーゼと考えられています。
引用:
上記の通り最大の特徴は、抗菌薬の最後の砦と表現されるカルバペネム系薬が効かないことです。
カルバペネム系薬が効かないので、もちろんペニシリン系やセフェム系など他のβ-ラクタム薬も効きません。
では、そんなメタロ-β-ラクタマーゼを産生するS. maltophilia感染症の治療はどんな薬剤を選択すればよいのか。
それは、ST合剤やテトラサイクリン系薬剤です。
日本化学療法学会のガイドラインでは、ミノサイクリンの点滴静注または経口投与か、ST合剤の経口投与または点滴静注が推奨されているようです。
最後に
はい、マルトフィリア菌でしたー。
この菌は感受性試験をすると驚くほど多くの薬剤が効かないので、一度経験すれば印象が強く覚えられるかと思います。
名前は長いですが、認定試験の実技で出た場合は菌種名を正しく書かなければいけないません。
受験を考えている方はぜひしっかり覚えて下さいね。
では、お疲れさまでしたー!