こんにちは!
今、世間では新型コロナウイルス感染症の拡大によりこれまで以上に公衆衛生や感染制御が注目されています。
もちろん新型コロナウイルス以外にも新しいウイルスは次々と発見されてきているわけですが、今回は比較的新しいウイルスの一つであるSFTSウイルスについてまとめたいと思います。
目次
SFTSウイルス(SFTSV)とは
SFTSVは重症熱性血小板減少症候群(sever fever with thrombocytopenia syndrome:SFTS)の原因ウイルスです。
正式名称は、2018年にフアイヤンシャン・バンヤンウイルスとなりましたが、今でもSFTSVという名前が多く用いられているように思います。
原因ウイルスは、ブニヤウイルス科フレボウイルス属に分類される新規ウイルス[SFTSウイルス(SFTSV)]。2018年のICVTの新規分類では、SFTSVはフェニュイウイルス科(Family Phenuiviridae)バンヤンウイルス属(Genus Banyangvirus)に分類されるフアイヤンシャン・バンヤンウイルス(Huaiyangshan banyangvirus)に科名、属名、ウイルス名が変更された。
引用:感染症学会HP 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
SFTSVは1本鎖RNAウイルスで、エンベロープがあります。
感染経路は、マダニ媒介。
通常ヒトーヒトの飛沫感染は考えにくいようですが、血液や体液を通しての接触感染は起こりえます。
とはいえ、健常皮膚からは感染しませんので、医療従事者の針刺し事故や、傷口に患者血液が付着した場合など接触感染は非常にレアなケースなのかと思います。
因みに、SFTSVはエンベロープ有りのウイルスですので、アルコール消毒が有効です。
疫学
世界初の報告は、2011年に中国からのものでした。
(報告は2011年、症例は2009年。)
日本での最初の報告は、山口県の50歳代女性が死亡した症例です。
その後、他の症例の保存血清の検査により、それ以前にもSFTSの症例があったことが確認されているそうです。
また、好発時期はマダニの活動時期である春から秋です。
そして地域分布の特徴は、西日本に多いことです。
( 2021年7月3日に関東で初のSFTS報告がありました。
※2021年7月4日追記)
さらに、感染者はマダニと接触する機会の多い農業や林業等の屋外活動する人に多いのが特徴です。
余談ですが、認定を目指して勉強する際にはこのように
- 好発地域
- 好発年齢
- 性差
- 感染契機
などの特徴もしっかり抑えておきましょう。
臨床検査技師は病原微生物そのものの性状や検査法のみを勉強しがちですが、それだけでは認定試験は解けません。
それらに加えて疫学や感染対策、そして症状に治療など総合的に感染症を勉強しましょう!
感染症法
医師は直ちに最寄りの保健所に届け出を行うことが義務付けられています。
検査
通常、地方衛生研究所か国立感染症研究所で行われています。
血液を用いた定量的one-step RT-PCR法が用いられてますよ。
症状と治療
主な症状は、発熱と消化器症状(嘔吐、下痢など)です。
潜伏期間は6日から2週間程度。
血液所見として白血球減少や血小板減少、血清酵素(AST,ALT,LDH)の上昇などがありますが、特異的な所見ではありません。
重症例では、意識障害や出血傾向を示し、呼吸器不全やDICなど多臓器不全を起こし死に至ることが多いようです。
日本の死亡率は、2020年12月30日現在で13%程度です。
この死亡率は報告時の死亡率であり、報告後に亡くなられた例を含めると20%以上と考えられているそうです。
発症の5人に1人程度がなくなっている訳ですから、とても高い死亡率ですね。
しかも、治療は基本的に対象療法しかありません。
あとは、SFTSに対して承認されたわけではありませんが、リバビリンやファビピラビルなど他のウイルスに対して効果を示す薬剤が、培養細胞を用いた実験でSFTSに対する効果を報告されており、今後のさらなる検証が期待されているみたいです。
最後に
マダニ媒介感染症であるSFTSは、予防として何より「マダニに噛まれないこと」これに尽きますね。
僕は地方に住んでいるので、近くの川原や山で遊ぶこともあります。
暑さとの兼ね合いもありますが、マダニ生息エリアに足を運ぶ際はなるべく肌の露出を抑えていこうと思います。
ダニ媒介に関しては以前リケッチアも書いてありますので、読んでみて下さい。
では、また!