医世界で学ぶ微生物

臨床検査技師が感染症を勉強するブログ

【まずはこの2つ】腸内細菌目細菌の鑑別①

こんにちは!

住んでいる市内にホタルを見れる場所があるので、先日行ってきました。

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写真はホタルが見れる沢へと続く山道です。

ホタルの優しい光がとても綺麗でした。

ただ、数が少なくそのうちホタルいなくなってしまうんじゃないかと少し寂しさと不安も覚えました。

自然を大切にしていきたいですね。

 

今日は腸内細菌目細菌の鑑別についてやりたいと思います!

学生時代これが嫌で微生物嫌いになった人も多いんじゃないでしょうか。

実は、私もその一人です。

まず細菌名もすんなり入ってこないのにその生化学的性状を覚えるなんて無理だよと思ってました。

一気にやろうとせず、まずはIPA,VPの2点についてやりましょう!

 

目次

 

腸内細菌目細菌

まず、CLSI M100 30thにおいて、これまで腸内細菌科細菌とされてきた細菌のうちいくつかのものが、腸内細菌科ではなくなってしまいました

具体的には、Proteus属、Morganella属、Providensia属、Yersinia属などです。

そのため、これまで腸内細菌と呼んでいた菌達を同様に示す場合は、その上位の腸内細菌という表現が用いられていくことになります。

概要は下の通り。

 

【M100 30thにおける語句の重要な変更点】
- Enterobacteriaceae(腸内細菌科細菌)がEnterobacterales(腸内細菌目細菌)と上位レベルに変更される。

この変更は、2016年に腸内細菌目Enterobacteralesとこれに属する7つの科が新たに提唱されたためである。

7科は、Enterobacteriaceae, Erwiniaceae, Pectobacteriaceae, Yersiniaceae, Hafniaceae, Morganellaceae, Budviciaceaeであるが、これまでのEnterobacteriaceae;腸内細菌科細菌に属していた菌種が他の科に移籍されたために表記をEnterobacterales(腸内細菌目細菌)と目レベルの階層まで広げる必要があった。

例えば、Proteus属菌はMorganellaceaeに移籍され、Edwardsiella属菌はHafniaceaeに移籍された。

引用:日本臨床微生物学会HP 国際委員会 2019 Jun CLSI報告

 

まぁ、分類が変更されても生化学的性状を用いた鑑別の仕方が変わるわけではないので、そうなんだと知ってさえおけばOKですね!

腸内細菌目細菌の代表的な菌属はこちら。 

  • Proteus
  • Morganella
  • Providencia
  • Klebsiella
  • Serratia
  • Enterobacter
  • Salmonella
  • Citrobacter
  • Escherichia
  • Shigella
  • Yersinia
  • Plesiomonas

え、代表で12種も?って感じですよね。

こんなの突き付けられたら学生の頃の私はそりゃ嫌になります。

まずは、この12種をIPA→VPと2つの反応を用いて3つに分類していきましょう!

 

IPA

IPA(indol pyruvic acid) 反応は、菌の産生する脱アミノ酵素によって培地中のトリプトファンインドール・ピルビン酸に変わり、これがさらに培地中のクエン酸アンモニウムの鉄イオンと結合して褐色を呈する反応のことです。

IPA反応はSIM(sulfide indol motility)培地によって確認できます。

以下はSIM培地にShigella属を培養した写真です。

SIM培地中の赤痢菌(非運動性)

菌を穿刺した部分だけで発育する。運動性の菌は穿刺線以外の部分で発育、あるいは培地全体が濁る。管底5mmを残して接種する。

引用:神奈川県衛生研究所HP 確認培養法

 

判定は下の通り。

 

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引用:おるてぃのひとりごと 微生物解説ー培地

 

IPA陽性の場合は培地上部に褐色帯が見られます。

ところで、このおるてぃさんのサイトは本当にすごいです。

国試対策が非常にわかりやすくまとめてあり、かつ痒い所に手が届く詳細さです。

しかも微生物のみならず、全分野。

何者なのでしょうか尊敬です。

学生さんや臨床検査技師さんでもぜひ見て貰いたいです。

 

oltyblog.com

 

話を戻します。

このIPA反応を用いると以下のように腸内細菌目細菌を分類できます。

  • IPA陽性:Proteus属、Morganella属、Providencia
  • IPA陰性:それ以外

これで3つ、即ち4分の1の菌属がIPA陽性群として分けられます。

 

 

VP

IPA陰性菌群に対してVP(Voges-Proskauer)反応を見ます。 

細菌は解糖系によりグルコースからピルビン酸を産生します。

このピルビン酸から代謝を進めアセトインを産生するかを見るのがVP反応です。

アセトインが存在すれば、VP試薬中の水酸化カリウムと反応し赤色のジアセチルが合成さるため、これを判定に利用しています。

 

<VP反応の有無>
VP試薬を加えてから確認する。

▶赤色…VP反応(+)

VP・クエン酸の見方引用:おるてぃのひとりごと 微生物解説ー培地

 

IPA陰性菌群において、VP反応の結果は以下の通り。

  • VP陽性:Klebsiella属、Enterobacter属、Serratia
  • VP陰性:それ以外

はい、これでまた3つの菌群が分けられました。

ただし、気を付けないといけないのがYersinia属です。

Yersinia属は36℃培養ではVP陰性ですが、Y. enterocoliticaは25℃培養でVP陽性となります。

 

IPA,VPまとめ

さて、この二つの反応を用いての分類まとめです。

IPA陽性の3つ
  • Proteus
  • Morganella
  • Providencia属

因みにVP反応は、Proteus属は(±)、Morganella属、Providencia属は(-)です。

IPA陰性かつVP陽性の3つ
  • Klebsiella属
  • Enterobacter属
  • Serratia属

Y. enterocoliticaは25℃培養でVP陽性

IPA陰性かつVP陰性の6つ
  • Salmonella
  • Citrobacter
  • Escherichia
  • Shigella
  • Yersinia
  • Plesiomonas

これらはさらにH2S産生などを用いて分類できますが、それはまた別の機会に。

 

終わりに

生化学的性状を覚えるのって嫌ですよね。

わかります。

正直、私は大学の時、微生物の試験は何度も追試を受けました。

菌名アルファベットですし、反応も糖とかアミノ酸とか種類が多くてとっつきにくかったんですよね。

生化学的性状を覚えるのに、その反応の原理も知ろうとするとほんと大変。

でも原理は一旦見ておけばそれでいいんです。

あとはワンと鳴いたら犬、ニャンと鳴いたら猫と認識するように、IPAが陽性ならこの菌、IPAが陰性ならそれ以外。

そしてたまにニャーと鳴く珍しい犬がいるかのような例外的な菌がいる、という風に割り切りましょう!

そうしてとりあえず覚えて実践していくうちにふと原理を気に掛ける時が来ます。

そしたら再度調べて思い出す。

何事も知識はそうした反復の中で定着していくものかと思います。

 

では、お疲れさまでした!