SAWASAN-BLOG

臨床検査技師の「知識整理」と「気まま雑記」ブログ

【PYRとCAMP】β溶連菌②

こんにちは!

β溶連菌の第二回です。

今回はβ溶連菌の菌種を見ていきましょう!

 

目次

 

β溶連菌の鑑別

菌種の鑑別には、主にLancefield分類PYR試験CAMPテストを使います。

Lancefield分類については前回の記事で述べました。

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PYR(L-ピロリドニル-β-ナフチルアミド試験)

ピロリドニルアリルアミダ―ゼの有無を見る試験です。

酵素加水分解によりβ-ナフチルアミンを遊離するかを確認します。

β溶連菌以外の菌種では、

  • Enterococcus属は陽性
  • Staphyrococcus属の鑑別に用いられる

 などで試験に出てきます。

 Staphyrococcus属では、

  • S. aureus、S. epidermidisは陰性
  • S. intermedius、S. lugdunensisは陽性

です。

 

CAMPテスト

サイクリックAMP因子の産生有無を調べる試験です。

ということは、CAMPとはサイクリックAMP因子のことだったのですね!

と、思うじゃないですか?

違いました。

CAMPはこの試験を提唱した3人の名前の頭文字が由来となっています。

このサイクリック因子はS. aureusが産生するβ-ヘモリジンのヒツジ赤血球溶血作用を増強させます。

このことを利用して調べたい菌とS. aureusを同時に培養して溶血の増強が見られるかを確認します。

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引用:ID CONFERENCE CAMP試験

とてもきれいな写真ですね。

GBS(S. agalactiae)は、S. aureusの溶血を増強させているのでCAMP(+)となります。

他にCAMP陽性となる有名な菌としてListeria monocytogenesが試験によく出ます。

 

β溶連菌の種類

では、各菌種の特徴や、PYRにCAMPなどの性状をまとめていきます。

S. pyogenes 化膿レンサ球菌

名前の通り創傷感染の原因菌です。

また、急性咽頭炎蜂窩織炎、猩紅熱、中耳炎などの原因菌でもあります。

感染後には糸球体腎炎やリウマチ熱が起こることがありますが、それは免疫学的機序によって起こるようで、菌の直接的な作用が原因ではないそうです。

さらに、軟部組織壊死と敗血症性ショックをを起こす劇症型溶血性レンサ球菌感染症を起こすことがあります。

鑑別の特徴は、

  • Lancefield分類 A群
  • PYR(+)
  • CAMP(-)
  • バシトラシン感受性

 病原因子として、

  • 発赤毒(Dick毒素)
  • DNase
  • ストレプトキナー
  • ストレプトリジン

などがあります。

DNase産生菌はStaphyrococcus属の記事にまとめてありますので覚えましょう。

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S. agalactiae

ヒトの腸管や女性の膣内などに存在します。

一般に病原性は高くありませんが、妊婦からの経産道の垂直感染で新生児髄膜炎を起こすことがあります。

ですので、妊婦のスクリーニング検査でβ溶連菌の検索を行いますね。

  • Lancefield分類 B群
  • PYR(―)
  • CAMP(+)
  • 馬尿酸分解(+)

因みに、B群溶連菌といえば臨床的にはS. agalactiaeですが、例えばS. halichoeriなど他にもB群溶連菌はいます。 

S. halichoeriは馬尿酸分解陰性です。

 

S. dysgalactiae subsp. dysgalactiae

ヒトの口腔、咽頭、消化管などに存在。

  • Lancefield分類 C群
  • PYR(―)
  • CAMP(―)

 

S. dysgalactiae subsp. equisimilis

ヒトの口腔、咽頭、消化管などに存在。

SDSEと略される菌です。

S. pyogenesと同様に劇症型溶血性レンサ球菌感染症の重症度や症例数の多さが注目されています。

  • Lancefield分類 A、C、G、L群
  • PYR(―)
  • CAMP(―)

 

S. dysgalactiae subsp. zooepidermicus

なんとこの菌、ヒアルロン酸精製に使われています。

関節内補填療法や皮膚補填剤に使われているようです。

これを知って私は得意げに人に話してしまいましたが、相手からは知りたくなかったと言われました。

みなさん気を付けましょう。

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引用:キッコーマンバイオケミフィア株式会社HP

  • Lancefield分類 C群
  • PYR(―)
  • CAMP(―)
S. canis

canisは犬のことです。

もともとは動物の感染症起炎菌とされてきましたが、近年、菌血症やイヌ咬傷に関連した感染症として報告されています。

  • Lancefield分類 G群
  • PYR(―)
  • CAMP(+/―)

 

S. anginosus

口腔や腸管内の常在菌です。

嫌気性菌との混合感染で膿瘍形成傾向が増強するそうです。

(参考:重福隆太 他「Streptococcus anginosus group による化膿性肝膿瘍の 3 症例」日消誌 2013;110:1468―1480)

  • Lancefield分類 A、C、G、F群
  • PYR(―)
  • CAMP(―)
 
S. pseudoporcinus

B群溶連菌として同定される菌の中に実は混ざっているとされる菌です。

しかしLancefieldのB群に分類されているわけではありません。

群別試験においてB群と交差反応を示すとされています。

  • Lancefield分類 E、P、NG1群(B群とクロス反応)
  • PYR(+/-)
  • CAMP(+)

 

 

感染症

劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)は五類感染症に分類されています。

S. pyogenesやSDSEが特に注目されますが、これらA群やG群の菌種以外に、B群やC群でも報告されています。

 

 

終わりに

国家試験レベルであれば、

  • A群の代表はS. pyogenes
  • B群といえばS. agalactiae

さらに、

  • バシトラシン感性、PYR陽性ならS. pyogenes
  • 馬尿酸加水分解陽性、CAMPテスト陽性ならS. agalactiae
  •  PYRに関しては、Enterococcus属も陽性 

このくらいで大丈夫かと思います。

しかし、二級資格試験や認定試験となるともう少し必要です。

β溶連菌で、

  • PYR陽性はS. pyogenes、S. porcinus、S. pseudoporcinus
  • 馬尿酸加水分解は、S. agalactiae陽性、S. porcinusは不定
  • CAMP試験はS. agalactiae、S. porcinus、S. pseudoporcinusが陽性、S. canisは不定

ここまで覚えておきましょう。

S. porcinusはブタの感染菌です。

 

ブログにすると文章や箇条書きになってしまいますが、性状まとめはやっぱり表の方が覚えやすいかもしれませんね。

いずれ様々な性状で、○○といえばこの菌!

といったようなまとめも作りたいです。

 

では、お疲れさまでした!