こんにちは!
血液培養に関する記事二つ目になります。
では、早速勉強していきましょう!
目次
培養検査
培養期間
Cumitech血液培養検査ガイドラインが推奨する培養期間は5日間です。
これはある文献で感染性心内膜炎の原因菌の100%、感染性心内膜炎以外の原因菌の95.5%が5日以内に検出できたという報告が根拠となっているそうです。
しかし、Helicobacter cinaediiなど一部の菌では培養に5日以上を要すため、実際には7日間の培養が多く行われているようです。
これはそれぞれの施設で採用している装置の培養可能件数と、実際の血液培養の検査数との兼ね合いもあるかと思います。
7日間培養でも装置が満杯にならずに検査を回せるのであれば7日間培養がいいかもしれませんね。
因みに、私の働く病院では7日間培養しています。
測定原理
現在採用されている血液培養装置の多くは、日本ベクトン・ディッキンソン社のバクテックかシスメック・ビオメリュー社のバクテアラートかと思います。
このどちらも微生物の増殖により発生した二酸化炭素の測定を原理としています。
二酸化炭素蛍光センサーの原理
- 培養ボトル中の微生物によって発生したCO2はボトル底部のCO2透過性シリコンエマルジョン(CO2センサー)のpH変化を誘導します。
- このpH変化は、シリコンエマルジョン中の蛍光色素層に影響を与えます。
- 機器本体から発せられる緑色励起光により励起されたCO2センサーは、蛍光を発します。
- 機器本体にある赤色蛍光検出センサーは、発せられた蛍光を感知します。微生物由来のCO2以外のノイズは検出しませんので、検出された蛍光強度は培養ボトル中のCO2量と比例します。
引用:日本ベクトン・ディッキンソンHP BD バクテック™ FX システム
また、真菌や抗酸菌の検出には酸素の消費を検知する原理も用いられています。
この二酸化炭素または酸素の測定は、10分間隔で行われます。
陽性を検知するとアラートがなるため、速やかにグラム染色、サブカルチャー等の処理をすることができます。
残念なのが、固形培地での培養のように菌の発育と同時に菌の推定ができない点ですね。
例えばBTB寒天培地に発育した菌は、コロニーの色、形状等で発酵菌とまで判断できることも多いです。
しかし、血液培養は、というより液体培地培養の場合は、発育したらそれが何なのかそこからまた調べなければいけません。
まぁこの辺は質量分析や遺伝子検査がますます普及してカバーされていくのかもしれませんね。
偽陽性の原因
測定原理が二酸化炭素の測定ですので、細菌の増殖以外で二酸化炭素が上昇すると偽陽性となります。
最も多いのが、過剰量の白血球による偽陽性じゃないでしょうか。
私の一番最近の経験だと、偽陽性検体の患者さんの血算は白血球数8万/μL以上あったと思います。
炎症反応高値で白血球数2万とかいう程度ではそうそう偽陽性にはならないはずです。
偽陰性の原因
- ボトルへの血液摂取後、血液培養装置へのセットが遅れた場合
- ボトルへの血液摂取量が不足または過剰
- 抗菌薬による細菌の発育阻害
- 抗菌薬以外の薬剤による細菌の発育阻害
- EDTA、ヘパリン、クエン酸などの抗凝固剤入り採血管で採血した血液を培養ボトルに接種した場合
- 培養ボトルに添加されている抗凝固剤SPSによる細菌の発育阻害
装置による血液培養ボトル内の二酸化炭素の測定値は、血液培養ボトルを装填した時のそれがいわばゼロ合わせ、基準となります。
二酸化炭素濃度が装填時よりも増加すれば培養陽性、増加しなければ陰性です。
なのでボトル装填時点ですでに菌が増殖してしまっていると、その後十分な二酸化炭素の増加が検知できずに偽陰性となってしまいます。
また、EDTAやヘパリンなどは細菌に対して有毒に働きますので、これらが混入されている採血管で採取された血算や生化学検査のための血液は培養に用いることができません。
SPS(sodium polyyanethol sulfonate)は、リゾチームの中和作用、貪食作用防止、アミノグリコシド系抗菌薬の失活作用や補体活性化経路の阻害作用などを示し、培養の検出感度増加を助長します。
しかし一方で、Neisseria spp.、Moraxella catarrhalis、Peptostreptococcus anaerobius、Gardnerella vagimalisに対して発育阻害作用があります。
終わりに
偽陽性は陽性となったボトルをグラム染色やサブカルチャーにより確認しますのでまだいいですが、問題は偽陰性ですよね。
血液培養検体の8割以上は陰性です。
これらが本当に陰性かの確認をするのは作業量的に現実的ではありません。
ですので、正しい知識と手技でしっかり偽陰性要因を排除して採取した検体を用い、正確な測定を行うことが大切ですね。
次回は血液培養検査が適正に行われているかどうかの評価法についてやりたいと思います。
では、お疲れさまでした!