COVID-19の被害が多い地域と少ない地域との差についてBCGの接種歴が関与するのではないかという仮説がありますね。
これについての4月3日時点での日本ワクチン学会の見解は以下の通り。
「新型コロナウイルスによる感染症に対して BCG ワクチンが有効ではないか」という仮説は、いまだその真偽が科学的に確認されたものではなく、現時点では否定も肯定も、もちろん推奨もされない。
引用:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するBCG ワクチンの効果に関する見解【2020.4.3 Ver.2】
また、
本来の適応と対象に合致しない接種が増大する結果、定期接種としての乳児へのBCG ワクチンの安定供給が影響を受ける事態は避けなければならない。
引用:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するBCG ワクチンの効果に関する見解【2020.4.3 Ver.2】
つまり、真偽不明な情報に踊らされて本来の使用用途が果たせなくなるようにしないでということみたいです。
前置きが長くなりましたが、今回はBCGからの流れで結核に関連する検査であるツベルクリン反応や、IGRA(interferon-gamma release assay:IGRA)について勉強したいと思います。
目次
ツベルクリン反応
ツベルクリン反応は精製ツベルクリン(PPD)を皮内接種し接種部位に発赤(免疫応答)が見られるかどうかで結核感染の診断補助をするものです。
発赤の長径が10㎜未満で陰性、10㎜以上で陽性です。
ツベルクリン反応は現在小児を除きほとんど用いられていません。
なぜか。
それは、結核菌以外の抗酸菌感染でも陽性となってしまうからです。
さらにはBCG接種でも陽性となります。
日本の場合、生後一年未満にBCG接種しますのでツベルクリン反応の有用性は低そうです。
IGRA
IGRAは血液中のリンパ球が結核菌特異的抗原に対してインターフェロンγ(INF-γ)を産生するかを見る検査です。
結核菌に感染したことがあればINF-γを産生します。
ツベルクリン反応とは違いBCG接種や非結核性抗酸菌の影響は受けません。
ただし、とはいえ、非結核性抗酸菌のなかにはIGRAが陽性となるものがあります。
その交差性のある菌として、以下の3つを覚えましょう。
- Mycobacterium kansasii
- Mycobacterium marinum
- Mycobacterium szulgai
- Mycobacterium gordonae
因みにM. kansasiiとM. marinumは光発色菌群、M. szulgaiは暗発色菌群です。
国内で保険適用のIGRAにはQuantiFERON-TB(QFT)とT-SPOT.TB(T-SPOT)があります。
QFT
QFTはQFT-2G、QFT-3Gと世代が更新されてきており、現在使われているのはQFT-TB GOLD Plusです。
結核菌特異抗原としてESAT-6とCEP-10が用いられています。
採血は専用採血管4本。
陽性コントロール1本、陰性コントロール1本、検査用が2本です。
測定原理はELISA法です。
T-SPOT
T-SPOTは血液中のリンパ球を分離し、一定数にした上でESAT-6とCEP-10とともに培養します。
その中でINF-γを産生した細胞がどれくらいあるのかを計測する方法です。
測定原理はELISPOT法です。
採血はヘパリン加採血管1本(市販でOK)。
QFTとT-SPOTの比較
測定原理的には測定する対象が違いますね。
QFTは産生されたINF-γそのものの量を測定し、T-SPOTはINF-γを産生する細胞数を測定しています。
検査性能については、一概にどちらが良いかは言えないようです。
以下は日本結核病予防委員会からの引用。
これまでに公表されている報告ではQFT-3GとT-SPOTの診断特性に大きな違いはないことから,適用は基本的に同様であり,①接触者健診,②医療従事者の健康管理,③発病危険が大きい患者および免疫抑制状態にある患者の健康管理,④活動性結核の補助診断,が考えられる。
引用:インターフェロンγ遊離試験使用指針 2014年5月
検査性能以外の違いを挙げるなら、採血本数はT-SPOTの方が採血本数が少なく患者負担も少なく済みますが、測定手技が煩雑で職員検診などの大量検査では検査側の負担が大きくなるといったところでしょうか。
最後に、試験に出そうなポイントを3点補足。
以上です。お疲れさまでした!